「フリーランス新法」の成立とフリーランス保護の促進について [法改正]

  特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス新法」)が令和5年4月28日に国会で成立し、5月12日に公布されました。フリーランス新法の概要は以下のURLよりご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/001101551.pdf

 フリーランスが行う取引は、通常、企業組織である事業者が発注者となることが多く、発注者とフリーランスとの間には、役務等の提供に係る取引条件について情報量や交渉力の面で格差があります。そのため、フリーランスが自由かつ自主的に判断し得ない場合があり、発注者との取引において条件が一方的に不利になりがちです。フリーランス新法の施行により、以下のことが発注側に義務付けられ、違反した場合には、罰則が科されることになります。
 ・給付の内容、報酬の額などを書面または電磁的方法で明示すること
 ・報酬を60日以内に支払うこと
 ・ハラスメント行為に係る相談対応等必要な体制整備等の措置を講じること など

 フリーランスについては、令和3年3月26日に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下「ガイドライン」)が内閣官房 公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省によって策定されており、以下の内容が示されています。

 ①フリーランスの定義などの基本事項
 ➁フリーランスと取引を行う事業者が遵守すべき事項
 ③仲介事業者が遵守すべき事項
 ④現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準

 ガイドラインでは、フリーランスの定義を、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」としています。
 なお、「フリーランス」の定義に該当する場合でも、現行法上「雇用」に該当すると判断されると、フリーランスは、労働基準法、労働安全衛生法などの法律上の「労働者」とされ、発注者となる事業者は、使用者として法律に基づく様々な義務や責任を負うことになりますので、注意が必要です。

 例えば、労働基準法上の労働者に該当すれば、労働時間や賃金などに関するルールが適用されることになります。
 ガイドラインでは、労働基準法における「労働者性」の判断基準とその具体的な考え方は以下のように概要でまとめられています。

 (1)「使用従属性」に関する判断基準
   ①「指揮監督下の労働」であること(労働が他人の指揮監督下において行われているか)
   ②「報酬の労務対償性」があること(報酬が「指揮監督下における労働」の対価として支払われ   
    ているか)
 (2)「労働者性」の判断を補強する要素
   ①事業者性の有無(仕事に必要な機械等を発注者等と受注者のどちらが負担しているか等)
   ②専属性の程度(特定の発注者等への専属性が高いと認められるか)

最後に
 フリーランスは、自己のスキルを活かすことができ、また、事業主からの指揮命令を受けることなく時間の制約を受けない働き方が可能です。
フリーランス新法施行によりフリーランスの環境が整備されることで、働き方の選択肢の一つと考える人が増えていくのではないかと思います。
 一方、発注者にとっても、専門的な業務やシステム構築などの一定の業務だけを時限的にフリーランスに委託すれば経費の削減などにつながるため、フリーランスとして働く人が増えることは、フリーランスの選択肢や活用機会が増えることにつながり、発注者にとってもメリットが大きいと思います。

社会保険労務士法人ヒューマン・プライム MS2
https://humanprime.co.jp/